肺音について
1 肺音の種類と解説「ふきだし」
肺音を聴診することで肺の様子(健康状態)を知ることができます。肺音(Ⅰ)は生理的に生じる呼吸音(Ⅱ)と、病的な状態で生じる副雑音(Ⅲ)に分けられます。また、呼吸音は健常人で聴かれる正常呼吸音(Ⅱ-1)と、病的な状態で聴かれる異常呼吸音(Ⅱ-2)に分けられます。一方、副雑音は周期性のある連続性ラ音(Ⅲ-1)と、周期性の無い断続性ラ音(Ⅲ-2)と、その他の肺音(Ⅲ-3)に分けられます(図4.1の肺音樹を参照)。
この学習ソフトウェアでは、肺音名をクリックすると、その肺音が即座に聴け、疾患名も教えてくれるので、肺音と身体の状態(健康か否か)との関係を学習することができます。また、肺音名をクリックすることで、異なる肺音が容易に聴け、肺音の種類の比較ができ、肺音を誤り無く区別できるようになります。さらに、用語の右上の黄色の四角の風船(=「ふきだし」)をクリックすると、説明文が瞬時に現れ、何度でも内容を確かめ、記憶に留めることができます。
この学習ソフトウェアでは、肺音名をクリックすると、その肺音が即座に聴け、疾患名も教えてくれるので、肺音と身体の状態(健康か否か)との関係を学習することができます。また、肺音名をクリックすることで、異なる肺音が容易に聴け、肺音の種類の比較ができ、肺音を誤り無く区別できるようになります。さらに、用語の右上の黄色の四角の風船(=「ふきだし」)をクリックすると、説明文が瞬時に現れ、何度でも内容を確かめ、記憶に留めることができます。
図4.1 肺音の分類と肺音名(肺音樹の図)
(1)肺音の分類(種類数10種の内訳)
肺音はその性質によって図4.1に示すように分類されます。この図は「肺音の聴診に関する国際シンポジウム(1985年)[文献1]」で提案されたものを、本学習ソフトウェア用に改変したものです。本学習ソフトウェアに搭載した肺音は10種で(①~⑩)、その内訳を以下に示します。
Ⅰ.肺音
Ⅱ. 呼吸音:5種(内訳①~⑤)
(Ⅱ-1)正常呼吸音:3種(気管呼吸音①、気管支呼吸音②、肺胞呼吸音③)
健常人で聴き取れる呼吸音は、気道と気流との摩擦によって生じる音で気道の位置(気管、気管支、肺胞)によって、音の大きさや高さが異なり、代表的な音として①、②、③の3種に分けています。
(Ⅱ-2)異常呼吸音:2種(減弱、消失・増強音④、気管支音化⑤)
Ⅲ.副雑音:5種(内訳⑥~⑩)
(Ⅲ-1)連続性ラ音:2種(いびき音⑥、笛音(てき音) ⑦)
音の高さによって、低音のいびき音⑥と、高音の笛音⑦に分けています。
(Ⅲ-2) 断続性ラ音:2種(水泡音⑧、捻髪音⑨)
音の粗さと高さによって、粗くて低音の水泡音⑧と、細かくて高音の捻髪音⑨に分けています。
(Ⅲ-3)その他 :1種(胸膜摩擦音⑩)
肺に関係する肺外の音で、音の粗さが変化し、こすれる音を示します。
(2)解説(ふきだし)と記述項目
肺音樹の図(肺音の分類と肺音名)で使用した用語を、画面上では「ふきだし」を
用いて説明しています。その中で、「分類」では分類用語の意味を、「肺音名」では肺音の特徴を解説しています。具体的には以下の用語を対象にしています。
1)肺音の分類では、肺音①、呼吸音②、正常呼吸音③、異常呼吸音④、副雑音⑤、
連続性ラ音⑥、断続性ラ音⑦、その他⑧、の8種に分け、用語の意味、分類の機能、
聴き取りに必要な肺音の特徴、分類した肺音間の差異について解説しています。
2)肺音名(肺音の種類)では、気管呼吸音①、気管支呼吸音(気管支肺胞呼吸音)②、肺胞呼吸音③、減弱音④、気管支音化音⑤、いびき音⑥、笛音(及びスクォーク)⑦、水泡音⑧、捻髪音⑨、胸膜摩擦音、(Hamman’Subject: sign)⑩、の10種に分け、[1]聴診部位、[2]聴診音、[3]長さとタイミング、[4]大きさ、[5]高さ、[6]サウンドスペクトログラム(SSG)、[7]表現(擬音語)、[8]発生機序、 [9]主な疾患名を解説しています。ただし、[2]~[6]は相対的な表現が多く、[6]~[7]は主観的な評価になっていますので、各自で注意して聴いて下さい。
なお、気管支肺胞呼吸音とスクウオークは国際分類にはありませんが、気管支肺胞呼吸音は部位の特定や肺野を調べるのに適し、スクウオークは疾患を特定するのに役立つので覚えておくと便利です。
なお、気管支肺胞呼吸音とスクウオークは国際分類にはありませんが、気管支肺胞呼吸音は部位の特定や肺野を調べるのに適し、スクウオークは疾患を特定するのに役立つので覚えておくと便利です。
(3)解説(ふきだし)の内容
[1] 聴診部位: 聴診器をあてる身体の場所(位置)のことで、画面で表示、および図6.3で示してあるように、部位番号を頚部の一箇所(◎),前面の8箇所(①~⑧)、後面の8箇所(⑪~⑱)の計17箇所で表しています。カルテ記入の際は肺の構成要素を指す全肺野、前面、後面、右肺野、左肺野、上葉(上区、下区)、中葉、下葉などの肺の区域図の用語を用いると、情報共有が容易になります(肺の全体図や区域図については画面上の図4.2:呼吸器とその名称、図4.3:肺区域とその名称をご覧ください)。
[2] 聴診音: 健常人の肺音は、気管呼吸音を除けば極めて小さい音なので、集中して聴き取る必要があります。肺音は肺野を伝播して聴診されるので、低い音や粗い音は全肺野に広がって聴こえ、いびき音や笛音は共鳴して大きな音になって聴こえ、口元でも聴取されることがあります。一方、高い音や細かな断続音は局所領域で聴こえます。
一般に、肺音の持続時間が長く、副雑音の出現頻度が多く、大きさが大きく、高さが高いほど、病気は亢進しているとみなせます。一方、これとは逆に、体力が弱った人の肺音は減少や消失したりすることがあります。また、無気肺の場合は肺音が聴き取れない肺野が現れます。
一般に、肺音の持続時間が長く、副雑音の出現頻度が多く、大きさが大きく、高さが高いほど、病気は亢進しているとみなせます。一方、これとは逆に、体力が弱った人の肺音は減少や消失したりすることがあります。また、無気肺の場合は肺音が聴き取れない肺野が現れます。
[3] 長さとタイミング: 呼吸周期、吸気相/呼気相、両相、前半/後半、初期/中期/末期などの用語が使われ、呼気と吸気の比較や他の肺音との比較に使われます。簡易な比較記号として、「長い」や「大きい」、「高い」などが記号“>”で表わされ、「極めて」が付く場合は記号“≫”を使用します。
[4] 大きさと強さ: 一般に、音の大きさは感覚量(単位はID:ラウドネス)で表し、音圧(強さ)は物理量(単位はdB:デシベル)で表します。
[5] 高さ: 音の高さは周波数(単位はHz:ヘルツ)で表します。
[6] サウンドスペクトログラム(SSG): 音の構成要素である①周波数、②強さ、③それらの時間変化、を3次元の画像(図)で表したもので、横軸に時間(単位はsec:秒)、縦軸に周波数(Hz)、音の強さ(dB)を色(青,……,黄,……,赤の配色)で表します(すなわち「青は弱い,……,赤は強い」ことを示しています)。
[7] 表現: 肺音を擬音語で表現しています。また、吸気開始を記号“<”で、吸気と呼気の間を記号“|”で、呼気終了を記号“>”で表します。
[8] 発生機序: その肺音が発生した原因を記載します。
[9] 主な疾患: その肺音を生じさせた主な疾患名を記載します。
(4)分類の内容、および肺音の比較
1)正常呼吸音の中の気管呼吸音 気管支呼吸音 気管支肺胞呼吸音 肺胞呼吸音を区別するための特徴を表4.1-1に示します。
(注1)(吸気:呼気)とは、吸気と呼気に聴かれる呼吸音の持続時間の比。
(注2)・筒性とは、気体が筒(管楽器)の中を通るときの音。 ・さらさら音とは、木の葉が擦れ合う音。
(注2)・筒性とは、気体が筒(管楽器)の中を通るときの音。 ・さらさら音とは、木の葉が擦れ合う音。
2)連続性ラ音の中のいびき音と笛音を区別するための特徴を表4.1-2に示します。
連続性ラ音は0.25秒以上の持続音で、SSGでは横の縞模様が現れます。
連続性ラ音は0.25秒以上の持続音で、SSGでは横の縞模様が現れます。
3)断続性ラ音の中の水泡音と捻髪音、および胸膜摩擦音を区別するための特徴を
表4.1-3に示します。断続性ラ音や胸膜摩擦音は細かくて弾けるような音として
聴こえ、SSGでは縦の縞模様が現れます。