【解説】肺音は呼吸運動に伴って発生する聴診音の総称です。肺音は生理的に生じる呼吸音と、病的な状態で生じる副雑音に分けられます。また、呼吸音は健常人に聴かれる正常呼吸音と、病的状態で聴かれる異常呼吸音に分けられます。
(注)肺野を聴診しても肺音が聴きとれない場合があります(無気肺など)。
【解説】空気(吸気、呼気)が乱流または渦流となって気道内を流れ、気管から第7次分岐気管支* までの中枢気道で音を発生します。末梢気道や肺胞領域で音は発生しません。気流によって発生した音は、肺胞を含む肺実質と胸壁を伝播して聴取されます。健常人では聴取部位の違いによって、気管呼吸音、気管支呼吸音、(気管支肺胞呼吸音)、肺胞呼吸音に大別されます。
* 気管から肺胞までは、平均23分岐(18~30分岐)の気管支を経由しています。
(注)気管支肺胞呼吸音は国際分類にはないが、肺音の聴き取りで部位を特定するのに役立ちます。
【解説】呼吸運動に伴って発生する健常人では聴かれない異常な音です。副雑音には、肺内から発生するラ音(ラッセル音)と、肺外から発生するその他の音があります。ラ音の中には同一の音が持続して聴こえる連続性ラ音と、弾けるような音が聴こえる断続性ラ音があります。その他の音は胸膜摩擦音やHamman's signがあり、肺野の聴診の際に聴き取れる音です。
【解説】健常人の肺音は、聴診部位の違いによって、気管呼吸音、気管支呼吸音、(気管支肺胞呼吸音)、肺胞呼吸音に大別されます。呼気・吸気の長さや長さの比、大きさ、および呼気に注目して聴音すれば、各呼吸音の特徴が理解しやすくなります。
【解説】音源(気流)の変化、または音の伝播の異常によって発生します。気流の異常は換気の低下と増大によって生じ、伝播の異常は音源から胸壁までの距離と、その間に介在する病変に起因します。
【解説】主に気道狭窄や粘りのある痰によって発生し、0.25秒以上持続する管楽器様の音として聴こえます。連続性ラ音はいびき音と笛音に大別され、病変部だけでなく頸部の気管上でも大きな音として聴かれます。SSGでは、特徴的な横に流れる明瞭な線(縞模様)が現れ、いびき音(低音の連続性ラ音)は、200Hz以下の縞模様が、笛音(高音の連続性ラ音)は400Hz以上に縞模様が現れます。また、200〜400Hzの音はいびき音、あるいは笛音として聴かれ、単音性(monophonic)の音は少なく、多くの場合、異なった周波数の音が混在した多音性(polyphonic)の音として聴取されます。
【解説】全肺野の呼気、吸気の両相で、短くて、弾ける様な音(crackle)として聴こえ、水泡音(粗い断続性ラ音=低音)と捻髪音(細かい断続性ラ音=高音)に大別されます。低音とは250〜500Hzを、高音とは500〜1,000Hzをいい、これらが散発的、またはやや規則的に不連続な音として聴取されます。SSGでは、縦に延びた長短の線=縞模様(crackle)が集合して現れます。
【解説】肺外の音源として胸膜摩擦音とHamman's sign、ごく稀に肺内から肺動脈狭窄に伴う収縮期の血管雑音(bruit)が聴取されます。
【解説】心収縮の中期にクリック音として聴取されます。縦隔気腫や左気胸でも聴取されます。 [1]聴診部位:胸骨左縁, [2]聴診音:心収縮中期, [3]長さ:短い, [4]~[6]-, [7]表現:<バリッ>,<ガリッ>。
【解説】血流速度の増大や、血液粘性の減少などによって発生する血管雑音です。